コガネムシ 今朝もまた一匹
廊下にころり
私はサンダルで踏み潰す
そこにはもはや何の感情もなく
私はサンダルで踏み潰す
育てている薔薇の
根を食べたのはだぁれ
私の育てる薔薇の
蕾を食べたのはだぁれ
おまえでしょ
だから私は踏み潰す
靴底で クシャリ と乾いた音がする
それでも一瞬
一瞬の後にはもう
潰れたコガネムシの死骸
生きた欠片はもう
風が何処かへ散らした
残るのは
私の靴底に 小さな痕
コガネムシの体液
ほんの 一粒
私はその痕のついたサンダルで
歩き出す
昨日も今朝もたぶん
明日も
コガネムシ 今朝もまた一匹
廊下にころり
踏み潰すのにもはや何の躊躇いもなく
もはや
これっぽっちの躊躇いもなく
私は踏み潰す、その足で
私は今日もまた 歩いている
（写真・言の葉：にのみやさをり）