詩は外側から染み透る

ある朔の夜
夢主のない夢の中で闇はおのずからかがやき
詩は薄いガスのように闇に拡がり潜んでいる

詩は以前のように私の内側に沿わない
闇夜に拡がったまま統べられるのをいやがる
私は諦めて視ている
私は死んだ恋人を視るように視ている

あまりに視ていると
私は突然に投網のように闇夜の方へ投げ出される何かを視る
それが何か、しばらくはわからない
けれどそれは他でもない私の視線の中の私の身体

闇へ身を投げ拡がり拡がり
夢主のない夢の中の詩と混じりあい
けれど視ることは手放さない
視ることの速さはとめどがない
闇の孔を視ている
静かに私は(突然に私は)詩の中に生きて生きはじめる
詩は何も殺さない
私は詩のために何も殺さない
闇の孔も、意味の光も、形も、意思も

詩は夢主のない闇に潜み
ありとあらゆるものの
外側から染み透る

(1999年冊子『ひとり』より)


    1999年、夏、気まぐれにワープロで創ったてのひらサイズの冊子「ひとり」が、2015年、春、所沢の家を明け渡し九州への引っ越しの折に出てきた。
    当時、これを数名の親しい詩人に送ったところ「ひとり」はいけませんよと言われたので、後に友人を数名あつめて「ひとり、ひとり」とタイトル
    を改め、これも何冊か気まぐれに創った。「ひとり」を何号まで創ったかすでに記憶に無く、「ひとり、ひとり」の方はすでに1冊も手元にない。
    「想紡草」を書く手が長らく止まっているので、この「ひとり」第1号から、作品を引っ張ってきた。
    キーボードを打ちながら、16年前の自分の言葉を、見知らぬ詩人の言葉のように感じていた。長く生きた。まだまだ生きるらしい。(2015.05.04/類)

早坂類「ひとり」

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