201607

ガラス越し君が翳すスマートフォン
何処で見たのだろう〝Barbarian Harlem to Industry〟
僕が買って来た煙草を
牛乳と仕舞う間に
携帯電話フォンの画面は再び暗くなった。
折り畳み傘を閉じて立て掛けている
滴る雫の先、臭う猫砂。
誰に似たのか、君は――(僕を真似ている?)。
君が溶かした粉のポカリを
氷が更に薄める。既に終わろうとしている梅雨を
特別なものとして書架のような場所に収める。
敗北ばかりだったと錯覚してしまう一年、
その実は得たものも量り知れない歳月。
昼間から君は、細い
手元にスタンドを灯して
硬本ハードカバーに何とか読み耽っている。
取り違えているのかも知れないね、ただ
開き直りではないよ。反故のバラバラに散らかった書斎で
この記憶を、心底愛おしいと思えた。だから、
薔薇チャンミ薔薇チャンミだよ。
どうして自分がこんなに悲哀を感じるのか、
君は最早、泣いて過ごす日が多くなった。
何時、何処で、誰と、
人生に於いて出会うか。
宿命を信じない僕に、僕自身が苛立ちを
隠せずいるのだろう・・・。
悪いものさえ、ガラス越し、発光している、明滅している。
〝Barbarian Harlem to Industry〟何処かで見たロゴ。
つわりのひどい君を
一人室内に残して
ベランダで僕は風に当たっていた。

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