舵――って来る夏に

8月10日にミンジュが一度帰国します。
(今、僕はこの手紙を、洗面室に籠って書いている。)
彼女が再び日本に来ることがあるのか、あるとしても
僕とは暮らせないだろう。
適切な言葉を喪って、
心が反動する。ながい、
永続的な旅を思う。――人生、節目節目で
色々な事件が起るものだ。取り分け、
自分の場合は・・・
(湖畔に、釣り糸を垂れて
 夕暮れがいた。眩むような
 蝉時雨を抜ける。)
(ねえ、彼方だっけ? 彼方だっけ?)
律動を海峡に広げて、
翼が凍り付く。深く、
波状を押して進む。――絶対の、
約束。断ち切らないこと。
その上で、敢えて断つこと。これは、
佇立することだから・・・。(それとも孤立・・・?)
季節は梅雨チャンマが終わって、
シンは明後日から夏休みだ。――空港は、
人の出だろう。
昔、失くした財布みたいだ。
出て来るかも知れないし、出て来ないかも知れない。
そのどちらだって、僕は実際に経験したのさ。
僕たちに遣って来る夏。行って来いよ、大空に飛び立て。
君の、――僕たちの、真っさらな、
真っ白な夏!

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