凍る地方から

書籍商を使者に仕立て、更に白くなって行く冬の午後、
裁判所の門を出て舗路を歩む男の身体には、屹度きっと鋼製の屈強なバネが入っている。
今、並木の枝々に葉がなく、彼の脳が芯から冷え切っていようとも。
川面。
天鵞絨ビロード
嘆き。
見慣れたお前たちを俺は再び探している。
デルタの夏、自然林のせせらぎ。――笑うしかない、
そんな記憶を支えにして、見まいとした。
塑像トルソのスケッチの頸より上部が大きな花だった日、
もっといびつだったのはしかし現実だったろう。
凍て付いたフロントガラスの霜をガッガッと硬い刷毛で落しながら、老いた父のそんな背中さえを、
我々は自身の息子たちに見せてのこすことが出来ない。
クローク。小石。蜂蜜。――蜜蠟。
ぐちゃぐちゃに、くしゃくしゃになった手紙を、
鞄の奥底に俺はまだ取って置いた。
何時の日か、そのブツではなく意志が、
役立つ朝もあろうか。予測が的中することを願っている自分を、
恐ろしい怪物だと自身で考えている。
書籍商を使者に仕立て、更に白くなって行く午後の真冬。
けれど遠い半島の都市はして寒く、
詩人は白杖を宿命さだめと受容して歩む。

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