坂道に立ちながら、この一本の道が
続いて行く筈の先を、思案していた。
此方が封鎖されているのか、それとも、
彼方が封鎖されているのか…。
峠を越えると、見たことのない、
景色が見える筈だった。
見える筈だったその景色を、
見ることの出来ない己がいた。
梅雨時の晴れ間から覗いた、瞬間的な太陽を、
平和に向けた、俺たちの戦記を。
この記憶を書き留めるに当たって、
私は黙々とキーを打っているのだが、
思い出す度に、何時でもあの感慨に浸ることが出来る。
十年余の歳月を経て、そんな自分を眺め遣ってみる。
道端に転がっていた、ウィスキーの空瓶。
優しい風が吹き、草々が悠然と戦ぎ…。
私はそのとき、とても楽観的な気持ちだった。
行く手に流れる雲を振り仰いで、
極めて牧歌的な気持ちさえ、私は感じていた。