さくらえび 風がなしたるうつくしい化石のように降らせてあげよう
あおぞらの深さをさぐる黒鍵のエチュード とおい西瓜の香り
記憶の風がうなりをあげるそのたびにぶれて輝くリュートの一弦
シーラカンスの吸い物のようにさむい朝もペットボトルの山はきらめき
おなじ角度で弓ひくようにビル上で夕雲にのびるふたつのクレーン
天守の窓に かならずひらく 海よ この世に真一文字のふしぎ
真っ白な五月の坂にひとつまみのしめりけを置くS字のとかげ
想うとは水ににじんでふるえる声紋 けばだちながら積まれゆく雲
どんな言葉に裡から照らされているときもはたはたなびく裾というもの
記憶には重さがないと知らされるヘアアイロンのように薄いパソコン