御使の失せ果てし代に代七の封印を解き給ひしは誰
漁師の美津夫、金の香爐に藻たき聖ヶ濱に献じ給ひぬ
役場の美都子、香爐を取りて篝火を盛るや地に投げ給ひたりける
地震おこれり津波おこれり香煙ぞ神の御前に上らざりける
數多の御声、祈りこそあれ草薙の黑き波間に消え給ひけり
己が臓腑を坩堝となして沖つなみ毀つ岸邊に立てる御使
徒し御使、波枕して禮物を授けむがため再臨させり
七つの喇叭を持てる御使、屍體を葬ることさへ許さざるべし
第一の喇叭、天に火を噴く腑に雷光ふかく孕み給へば
第二の喇叭、噴けども炎も煙もなく色も匂ひも味もあらざる
第三の喇叭、噴きて溢るる聖水を海に投げ入れさせ給ひけり
第四の喇叭、御蔵の鍵を與へられ底なき杭を開き給へり
第五の喇叭、聖灰を降らせ大なる都を三つに裂かせ給へり
第六の喇叭、噴けば獣の徽章ある數多の民に腫物生じたり
第七の御使、諸國に鎮座ましませば地震津波を乞ひ給ひなむ
*Comment*
作品募集初回。3.11を聖書黙示録的に詠んだ短歌作品をいただきました。
安濃さんお見事。
第六の喇叭は近未来、さて、第七の喇叭は…。
他に河端さんの「像の墓場」、くどうさんの「短歌十首」も印象に残りました。
(早坂類・選 2012.07.01)