造本の旅人・1 『高瀬舟』森鷗外

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ここ数年、製本の習作としてさまざまなタイプの綴じ本を作りました。束見本のように中は白く、タイトルも本文もないものを作っているうちに、やはり内容に合わせた装幀、造本を考えたいと思うようになりました。

このコーナーでは自分の好きな作品を、自由な発想で一冊(あるいは数分冊の)本に仕立てる試みを公開していきたいと思います。

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『高瀬舟』は大正時代に発表された森鷗外の代表的な短編のひとつ。遠島の咎を受けて護送される男が、護送役の同心に乞われてその罪の子細を語るお話です。

高瀬川は水深が浅く、運行される高瀬舟は底の平らな浅い舟です。…というような状況から川面に浪がたつことはおそらくほとんどないと思われますが、表紙は同心の心中を察するつもりで浮世絵風な波の絵となりました。

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次第に更けて行く朧夜に、沈默の人二人を載せた高瀬舟は、黒い水の面をすべつて行つた。

末尾の一文です。くろぐろとした水のイメージから、本体も函も濃い青のテカリのない紙を選びました。
青というより「黒の手前の紺碧」という感じですか。色の名前が「ミッドナイトブルー」で、こりゃぴったりだな、と。

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[DATA]
本体 w49/h64/d10
函  w52/h68/d14.5 (mm)
表紙・函 ビオトープ ミッドナイトブルー
見返し・函内張 OKカイゼル 焦茶
本文用紙 書籍用紙

表紙・函印刷 シルクスクリーン( レトロ印刷TOY
本文印刷 レーザープリント

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