力と暗さ

心に翼を授けて。
未明、まだ眠っている君の寝顔を見つめて。
私は柱に凭れ、立ち竦んでいた。
(流し台に灯した明かりが
 襖を開け放った寝室の枕元まで、
 私たちの状況のようにか細く差している。)
猫も眠る時刻に
自分でさえちゃんと理解出来ない、
温い水のような感情を、
胸に溢れさせ・・・。
授かった翼を、へし折ろうとする
何物か、巨大な力に。
拮抗しようと、足掻こうと、暗い力に。
吹き荒ぶ平原に佇立する自身を
イメージして、やはりこの陶酔を、
脱し切れなくて。
愚かな、それでいて優しい、――そう、自分の優しさを、
猶も信じ込もうと。
若い君が眠っている。私は信じようとしている。
何を?――君に授かった、この翼を。
未明、まだ眠っている君の、
君たちの、真っ直ぐな
純真なもう一つのちからに、
自分は、一つの希望を見付けて・・・。

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