スナック棺

おせっかいにうるさいなぁと返すのも減ってわたしと母に降る雨

宝籤が当たった人も即自害するような街で生まれ育って

閉まらない雨戸とフォークダンスする母に合わせて鳴らす口笛

ベランダの鴉に餌を与えない罪でおいしい水を飲みほす

株券が紙きれになる阿阿阿阿と居間で小さな父がのた打つ

『食べられる野草・山菜図鑑』手にスリッパで行く牧野公園

空き缶を踏みつぶす音 この親にこの子と決めた神のゆびさき

欲しいのは、彼女、ベンツに乗る人を消す杖、社長のふかふかの椅子

土下座したこともあるんだブランコに座った男の靴に踏まれて

頼んではいないピザ屋の配達が今日も来る夕焼けを背負って

護身用の武器として相応しくない玄関に立てられたなぎなた

金がそんなに偉いかちきしょうそんなにも偉いか 金が 金を ください

親と交わした約束破り捺印を捺印を捺印をしました

わたくしは三十五歳落ちこぼれ胴上げ経験未だ無しです

ラガーシャツ着た父の写真ながめてた 落ちたね 今、雷が何処かに

ちらちらと腕のタトゥーを見せてくる姉の彼氏の前歯の黄ばみ

(なにが早く就職しろ、だ )ニラ玉と(この阿呆)酢豚とライスください

容赦ないってこれだ。星だった、降ってきたのは拳ではなく

最後いつも理由から掛け離れたとこで罵り合って立つここは崖

罵声 わけのわからん鉢植え わたしへと飛んでくるもの達の残像

医師が書くカルテの文字が寄り添って相談しているこれからのこと

あれ 声が 遅レテ 聞こえル 死ヌのかナ だれ この ラガーシャツ の男ハ

棺のなかはちょっとしたスナックでして一曲歌っていきなって、ママは

わたしのなかの進路指導の先生が死ぬなと往復ビンタしてくる

リーダーって感じの主婦の読経が綺麗だ団地に朝を塗りだす

無くなった。家も、出かけたまま母も、祭りで買ったお面なんかも

アパートは解体されてその場所に、鴉 しずかに陽が目に入る

車窓から眺める長閑な風景のなかにぽつんと見えたキャバクラ

サファリパークみたいに祖母が窓に手をかけて話をやめてくれない

次のかたどうぞ。の声に「あいっ」と言う 壁に気色の悪い蛾がいる

 

 

 

 

 

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