ルビのように細かい雨が降る。
台風が近付いている。
風に傘を翳すと
変に明るい空が見える。
歯医者からの帰り道、
無理もない、ちょっとした施術で
彼は治療台で泣きながら大暴れした。
「ちゃんと歯磨きの仕上げをして下さいね」
私も注意された。帰宅すると、
ミンジュが手作りの餃子を作っていて、
そんな新の姿を何となく見ていて、
何故か、自分は宇宙人でも見ている気分だった。
(私は彼を何だと思っていたのか…。)
包み終わって、まだ口内に麻酔が効いているのに、
同じ棟の子の部屋に遊びに行くと言う。
既に夕暮れていたし、出掛けるな、と言いたかったが、
彼が不憫にも感じられて、
七時までには帰って来るように私は告げた。
台風なんだから団地から出るな、と。
分かったと返事して、新はそそくさと出掛けて仕舞った。
白い粉の付いた餃子が生のまま、
大量に大皿に並んでいる。
フライパンをミンジュが強火で熱し始める。
胡麻油の香ばしい香りがして来る。
餃子の焼けて行くパチパチという音を聴きながら、
私は、
(耳を澄ますと、強くなって来た雨脚の音もしていて。)
私は、自分の子供のことさえ、
他人のことのように捉えている自分を、
更に棒で突き放して、
つっつっ、と眺めて遣りたい気分に浸った。