みらい×にっぽん

闘うことは忘れた
誰かを負かして愉快に浸ることも
人を出し抜いて足早に歩くことも
先を競って高みへ登ることも
人の幸福を羨んで自分を嫌悪することも
好きなだけ食べることも
華やかに着飾る夜も
立派な館に暮らす夢も
嘘も噂も虐めも妬みも
いつのまにか
捨てていた

気がつけば
風の中に
ひとりひとりで立っていた
季節は秋ばかり深く
秋の廻りを指折り数えた
〈ほろびのくに〉と誰かが言った
言いたい輩には言わせておけばいい
と小さく呟いた

大声で笑えなくても 微笑むことはできる
誰かを救えなくても 傍にいることはできる
見えないものを 慈しむことができる
花や鳥、森や空と
深く知りあうことができる
流れゆく時を受け入れて
慎み深く思惟することができる

百年先の経済なんて知りたくない
それよりも
百年先のこの大地に
子どもが走っているか
海は碧く川は満ちているか
かなしい偏りは終わっているか
憎悪や破壊は過去にだけ存在するか
幸いの手触りを
指の一本で感じることはできるか
それを知りたい

成熟した
穏やかな生き物に
静かに生まれ変わろう

未来を懼れることはない
未来に失望することは

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