飛び入り作品*小川周二さんの詩作品「友よ」「ながら」

「友よ」

たどり着くまでは
暗闇が続くと 知っていたのか
お前の友は 皆 お前を 祝福しているというのに
完璧以外は 不完全であると 嘆くお前の愚かさに 理解を示す友に 気付かず
お前はまだ 自ら暗闇を選んでいる
お前の太陽は まだ 歴史を知らず 苦しみでしか 苦しみを 紛らわせないのだ
今の幸福を 明日の欲求で壊すお前は よほどの 贅沢に馴れてしまっている
お前にしか 出来ないことが あるというのに 
他人を うらやんでばかりいる この上ない 馬鹿が お前なのだ
力を合わせる 喜びなしでは 何事も 為しえない
能力とは 能力を 越えたなにか
お前は 知っているはずだ
この広い 宇宙の 真ん中に 存在する 真心を
それを 求めて 旅に出ても お前自身の 真ん中が 空っぽであるなら
全ての 幸福は お前には 輝かず
愚かな 自分の 毒に まみれて 時が過ぎるであろう
お前の 心を お前が 育てるつもりなら
そうするが よい その時 お前は
始めて 感じるだろう 明日は 義務ではなく
希望なのだと

           

「ながら」

失いながら
傷つきながら
振り返りながら
やっと僕は前を向けるようだ
地獄のような 灼熱の太陽に焼かれていた
真夏の悪夢も
十年経つうちに 育った梨の中の水分に 癒されて行くのだ
否定された 人格も いびつな 青春も
いつか 養分となって 実を結ぶであろうと
とりあえずは 信じても よさそうだ
そういえば 気持ちが マイナスに傾いている時ほど
素直に 何かを感じてはいないか
自身に対する 追悼が済んだら
新しい心に 名前を付けて 歌っておくれ
それを 聞きながら 僕もまた
毎日の中に 微かな 喜びの揺らぎを見つけるだろう
平凡ながら 偉大な退屈に 埋没しながら
いつか 懐かしいと
広い空の雲を眺めながら
痛みを 思い出す為に


                 


                                          
小川周二プロフィール
1977年水戸市に生まれる
成城大学中退
著書に 「予感」「予感2」がある。


   

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