過ぎた日のきみに寄す    高月 框

どうぞこの胸の奥にもくちづけをください 凪が恋しいのです

完璧なあなたという名の幻想にぼくは押し潰されていました

ゆるやかにゆるやかに殺されていく言葉は熱だけ残すのでしょう

たかが秘密を分け合うだけの共犯者 肋骨なぞる深爪のゆび

縋れない背中は冷たい 平行の光の月に少し似ている

みちづれにできないぼくを許してよ きみの瞳の奥におびえて

あの日々を重ねるような あの日々を蹴散らすような セックスをした

ぼくの傷を知っているきみ ぼくを傷つけることができるのもきみ

明け方の眠りのようにやわらかなものだけきみに降れと祈ろう

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