さなぎ

春を越え、
夏を越え、
秋を越え、
冬を越え、

荒れ果ててもう誰も
住む者はおろか、通り過ぎる者さえ
いなくなったこの地に
それでも
花は咲くだろう
振り返る者など誰ひとり
ここにいなくとも
それでも花は咲くだろう
この地に
根を張り、己を全うする
それだけのために

そしておまえは知る

諦めのもうひとつの意味は
終わりなどではなく
はじまり
であることを

そしておまえは知る

終わりなど何処にもなく
その手が握り締めるものは
空虚でも廃墟でも終焉でも死でも何者でもない
己がかつて誰かに聴かせたことのある
胎動だということを

(写真・言の葉:にのみやさをり)

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