本能の崩壊~限界点

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適度な温度と
適度な酸素に水草
揃いも揃った好条件のもと
三〇センチ四方の狭っこい水槽の中で
増殖は見事な放物線を描き
うなぎ登りにのぼってゆく それが
と或る一点に達した
とき
増殖しすぎた魚たちが
闘争を開始する
朝昼夜 止むことなく
一匹 また一匹 と
白銀色の
ぷっくらとした腹を ひっくり返し
私の眼の前に
どうぞと言わんばかりに 晒してくれる

まさか 飯の付け合せに
する気にもなれず
プランターの隅に 仕方なく埋める
のだが
一体何時になったら 止むのだろう
彼らはそうしている間にも
次々に交尾し 孕み
一直線に 墓の代用となっているプランターの土中へと
遡ってゆく

今また一匹
幼い 生まれてまだ数える程の
時間しか経ていない一匹が
喘ぎ始めている 透き通った水面で

プランターの土は そろそろ
肥が多くなりすぎて
ぷつぷつと 音を立て始めている

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